令和6年度は9月1日祭事始め、9月4日浜垢離、9月7〜8日大祭、9月8日還御です

受け次がれる伝統の技 〆切の役割

〆切は最後に堂入りする28番目の祭組「元門車」のお役目です。〆切の役割は、渡御の際、大鳥居付近で御輿の後を追う裸の群集が、御輿に不敬がないよう制止することで知られていますが、出御の神事にもかかわっています。〆切の集団が神社に到着すると、矢奈比賣神社の幣殿では出御のための神事、渡御奉告祭が始まります。〆切の榊は御輿が渡御する参道を清め、神域と現世を隔てる結界を切り、御輿が神社からの出御を促すことと言われています。

【三番觸からの離脱と出立】
元門車は〆切のため、三番觸梯団から離脱し、元門車の会所に戻ります。会所では一息の休憩もないまま、〆切の準備にかかります。「天神社〆切」と記された黄色の襷と、神社から拝領した「矢奈比賣神社」の朱印が押された御幣をつけた榊が配られ、裸衆は襷を掛け、手ぬぐいを頬かむりにし、榊を手に持ち、会所前で待機します。〆切の集団を指揮する〆切の長が手にする提灯が高くかかげられ、いよいよ出立です。

【お山が動く】

「行くぞ」の〆切の長の声に、裸衆が「おお~」と応えます。会所番や町の人たちから「頑張れ~」の声援が送られ、〆切の集団は威勢のいい掛け声とともに神社に向かいます。山車の後には「〆切」と書かれた提灯を持つ〆切の長、両側には露払い役、さらにその後ろに榊を手にした裸衆が続きます。一路、神社へ。榊は風になびくように揺れ、これを「お山が動く」と形容する古老もいます。

 

【参 道】

境内入口(旧大鳥居)付近で御先供係と挨拶を交わします。ここで〆切を出迎える御先供係の方は伝令も兼ね、挨拶を終えると、〆切が到着したことを伝えるため社殿に戻ります。
〆切の集団は大鳥居、赤鳥居をくぐり、六ツ石へ。六ツ石では〆切の提灯を大きく左右に振り、拝殿に〆切が来たことを知らせます。山車も、六ツ石の北東隅の石の上に立ち、拝殿に向かい〆切が来たことを伝えるため、山車を回し「元門車」と書かれた背面をみせます。山車はここで〆切の集団を見送り、会所に戻ります。

【堂入り】
六ツ石、梅の木を抜け、いよいよ堂入りです。拝殿では鬼踊りが最高潮に達し、幣殿では出御のための神事が粛々と進められています。〆切の到着を知ったお堂の裸衆は足拍子で、境内にいる見物人も手拍子で〆切を迎えます。拝殿を前に榊を持つ裸衆はますます勢いが増し、榊が大きく揺れます。気勢を上げる集団の前で、提灯を持つ〆切の長と露払い役は拝殿に向かい一礼します。〆切の長が提灯を振り、堂入りの指示をだすと、榊を持つ一団は一斉に拝殿に駆け込みます。最後の集団「〆切」の堂入りです。 〆切が堂入りした拝殿はますます勢いを増し、激しい鬼踊りが繰り広げられますが、〆切は引き波のように速やかに拝殿を退去します。拝殿にいる時間はわずか数分程度。〆切は一団となり、拝殿から後押し坂付近に向かい、次の御役目に備えます。

【後押し坂で】

拝殿に堂入りした〆切は、拝殿を退去し、後押し坂付近に待機し、次の役目に備えます。この役目が御輿に不敬がないよう制止するために行う「〆切」です。〆切の裸衆は腰蓑を外し、参道の両脇に分かれ待機します。

 

【漆黒の中】

御輿の出御の直前、消灯を促す花火が打ち上げられ、町中の明かりが消されますが、「〆切」の提灯は御輿の通過まで灯し続けます。御輿が通過すると〆切の長が提灯の灯を消します。これを合図に参道の両側に控えていた〆切の男たちは、一斉に道に広がり、榊で地面をたたきながら、裸の男たちの前に立ちはだかります。裸の男たちを制止する〆切の一団と、御輿に続こうとする裸の男たちとの対峙が数分間続きます。

 

【榊納め】

〆が解かれると裸の男たちは堰を切ったように一斉に矢奈比賣神社を下り、総社(淡海国玉神社)へ向かいます。〆切も裸の男たち後を追い、総社につくと榊を納めます。今年の役目を果たした〆切は、名残惜しむように一団となって東海道を小走りで会所へ戻ります。